この事例の依頼主
30代 男性
ご依頼者様は30代前半の男性会社員の方でした。20代で転職を経験されており、勤務先を変わる際に数ヶ月の無職期間があったところ、この無職期間の生活費をキャッシングやクレジットカードの利用で乗り切ったのが、借入れが増大する主たる原因でした。ご相談時には新たな勤務先で勤務を開始されていました。その後、配偶者様とご結婚されて生活をされていましたが上記以外にも借入れがあり、ご相談時点で借入れは4社で総額200万円以上とお伺いしていました。ご自身の収入の範囲内で生活しながら返済を続けていたものの、だんだんと返済が遅れがちになったことからご相談にみえられました。ご依頼者様は、ご相談の際、任意整理(※債権者と交渉して、支払わなければならない利息の一部または全部を免除し、支払回数を36回(3年)から60回(5年)で調整して支払いを継続する債務整理の方法の一つ)を希望されていました。
改めて、お借入の状況をお伺いすると、借入総額は300万円を超えており、ご依頼者様の収入では任意整理手続きを進めたとしても、早かれ遅かれ支払いが滞ってしまうことが危惧されました。一方、ご依頼者様はまだお若く、特段大きな財産もお持ちではいらっしゃらなかったので、その借入総額との兼ね合いも考え、個人再生手続き(※借入れ総額等から算出される一定額を原則3年で返済することで、残部について免除がされるという法的手続き)をご案内させていただきました。その際、任意整理手続きをとった場合と個人再生手続きをとった場合の一般的なメリット・デメリットはもちろん、特にご依頼者様がそれぞれの手続きをとった場合の将来予測も踏まえて、ご提案をさせていただきました。ご相談者様においても、個人再生手続きのご提案をご理解いただき、一度、ご家族でご相談の必要があるということでお持ち帰りにはなられましたが、後日、改めて個人再生手続きをすすめるということでご連絡をいただき、ご依頼いただきました。その後、お電話での打合せや1-2か月に1度ご来所いただいての打合わせを進めていましたが、個人再生手続きを申立てる直前になり、ご依頼者様のご家族に手術が必要なご病気がみつかるなど、家計の状況が悪化してしました。家計状況の悪化も一時的なものであればなんとかカバーすることも可能ですが、今回は、一定期間改善が見られない可能性も高かったため、個人再生手続きに耐えられるか、かなり不透明な状況になりました。ご家族のご病気のこともあり大変なタイミングではありましたが、ご依頼者様と改めて方針について協議し、やはり将来予測を踏まえ、自己破産(※借入れについては全て免除される債務整理の方法の一つ)を提案させていただきました。ここでも、ご依頼者様の状況を踏まえてメリット・デメリットを説明させていただき、正確な自己破産についての知識を得ていただいたうえ、自己破産への方針変更を決断いただきました。その後も数回の打合せを経て、自己破産手続きを申立て、管財人面談に弁護士も同席するなどして調査にも協力し、無事、免責決定を得ました。
借金問題は、適切なタイミングで適切な手続きをとれば適切に解決できます。ご相談に見えられる方の中には、インターネット等でお手続きをお調べになって、ご自身でとりたい手続をお考えになった上でご来所いただく方もいらっしゃいます。適切な手続きが選択できていれば問題ありませんが、誤った情報や誤解の上判断をされ、適切でない手続が選択されている場合もあります。ご判断に迷われた際、そうでなくとも、方針決定から弁護士に相談されることをお勧めします。また、個人再生手続きや自己破産手続きなど、裁判所に申立ててその判断を仰ぐ手続は、準備から裁判所での審理期間を含め、ある程度の期間を要します。その間、様々な事情で家計状況が変動することもあります。もちろん、ある程度の変動は織り込んでおかないといけませんが、この度の新型コロナウイルスの流行など、全く予想できない事象がないとも言えません。その様な場合も、ご依頼者の方の今後の生活を考えれば、弁護士において柔軟に対処し、適切な方針変更という決定をしなければなりません。今回は、ご依頼者様が打合せにおいて家計状況はもちろんのこと、お仕事のことやご家庭でのことなどをしっかり共有していただいたので、適切なタイミングで方針変更ができました。その意味で、弁護士の力だけでなく、ご依頼者様と一緒に解決ができた事件だと思っています。