この事例の依頼主
20代 女性
相談前の状況
相談者は20代後半の女性で、勤務先の代表者は70歳代の男性。他にも男性従業員は数名いたが、勤務時間中は外部の現場にいることが多く、事務所には相談者と代表者の二人きりになることが多かった。代表者は、相談者の手を握ったり、腰に手を回してきたことがあった。また、業務命令として退勤後自宅に着いた際にはその旨ショートメールを送ることを強要した。またショートメールでは「好きだ」との好意を示す内容のメッセージが複数送られてきた。相談者は体調を崩したため、会社を辞めたいと代表者に伝えたところ、代表者から途中で突然辞めることに対する損害賠償を請求すると言ってきた。そして相談者の携帯に複数回電話をしたり、自宅に訪れる事をほのめかすメッセージを送ってきた。
解決への流れ
相談者の代理人に就任し、以後相談者への接触を控えるよう要求するとともに、相談者に対する度重なる上記行為はセクシャル・ハラスメントにあたるので、慰謝料の支払いを求める損害賠償請求をした。相手方にも代理人弁護士が就き、示談交渉を開始した。相手方は直接証拠のない、手を握る、腰に手を回すなどの行為は否定してきた。相談者は、労働審判手続を行うことは拒絶したため、早期解決のため、当事者間で合意できる最高額の金額を目指したところ、100万円を支払う旨の示談が成立した。
セクシャル・ハラスメントも、直接証拠がない場合には立証が困難な例が少なくない。前後の事実関係や被害者本人の尋問を経た上であれば、接触行為の立証の可能性のあったところであったが、本人の精神状態から、長引く紛争は避けたいとの考えを尊重し、裁判前合意を成立させた。