この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
娘さんが相談に来られ、母親(80代)が入院中に目を開けなくなり、そのまま自然に亡くなるならと様子を見ていたが、けいれんを起こすようになったので不審に思い、転院をお願いしたところ、転院後すぐに「頭に外傷性と思われる血腫があります。前の病院で転倒されたのでは?」「時間が経っており、手術をしてももはや意識は戻らないので、手術はしません。」と言われて驚いた。転倒したことは聞いていない。聞いていればすぐ検査してもらったし、その時治療すれば助かったのではないか、とのことで、転倒を知らせてもらえなかったことに憤りの様子でした。
解決への流れ
カルテを調査し、医師らに面談したところ、直接見た職員はいないものの、患者は椅子から立ち上がろうとしたときに後ろ向きに転倒し、床で後頭部を打ったと思われることや、転倒直後の診察では意識のはっきりした状態とされたこと、当日夕方から意識レベルが悪くなっていったことなどが分かりました。後頭部を打ったことは診察でも確認されているのですから、遅くとも意識レベルが悪くなった時点ですみやかに脳外科のある病院等適切な病院に転送し、適切な検査・治療をおこなっていれば助かったのではないかと考え、損害賠償請求をおこないました。訟外での請求は拒否されたため、訴訟を提起し、勝訴的和解を勝ち取りました。
高齢者の病院・施設における転倒・転落は、起こりうるものであり、それ自体は必ずしも病院・施設の法的責任が問えるものばかりではありません。しかし、状況から転倒して頭部を打ったことが確認されているにもかかわらず、家族に連絡しない、頭部CT等の検査をおこなわない、意識レベルが悪くなってきても、頭部打撲によるものと疑わないなどの点は、問題があるものと考え、その点を指摘し勝訴的和解を勝ち取りました。なお、当該病院も、本件後は患者の転倒等があった場合はすみやかに家族に連絡するようにしているとのことです。