この事例の依頼主
男性
相談前の状況
依頼者のお父さんが亡くなったところ、お父さんは公正証書遺言を残していました。その公正証書遺言によれば、依頼者以外の特定の相続人が、遺産のほぼすべてを相続するとされていました。依頼者はその公正証書遺言がお父さんの意思に基づいて作成されたのか分からず、また仮に公正証書遺言が有効だとしてもその内容が不公平であるので自分の遺留分が侵害された部分について、遺留分侵害額請求を行いたいということで当事務所に相談をされました。
解決への流れ
当事務所からその相続人に連絡をしましたが、交渉が不可能であったため、訴訟を提起しました。同訴訟の中で、裁判所を通じて医療記録などを取り寄せた結果、お父さんの公正証書遺言は、お父さん自身の意思で作成した可能性が高いことが確認できました。そのため遺留分侵害額について、金銭の支払い求めました。結果、相手方がそれに応じたことから和解が成立し、依頼者に支払いがなされました。
自筆証書遺言や公正証書遺言が残されていたとしても、それを作成した当時にご本人の判断能力に疑いがある場合もあります。その場合には遺言の無効を主張することも考えられますが、まずは要介護認定に伴う資料、医療記録などを取り寄せて当時のご本人の判断能力について客観的に把握する必要があります。他方で遺留分侵害額請求は「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する」とされています(民法1048条 参照)。そのため遺言の有効性を争う場合でも、遺留分侵害額請求を念のために行っておくことが必要です。このような方針を依頼者と共有した上で訴訟を提起し、資料の収集を行いました。ご依頼者も納得の上で遺留分侵害額請求に切り替えることができ、上記のとおり解決に至ることができました。