この事例の依頼主
40代 女性
私は既婚者ですが、独身男性Aと不倫をしてしまい、それが夫にばれてしまいました。夫は、すぐにAに連絡をし、私との交際をやめるよう申し入れましたが、Aは夫を無視し、私への接触を続けました。他方、私は私で、Aが私から借りたお金を返そうとしないことや、私に執着するあまり、頻繁に連絡を繰り返し、ついに私の仕事や体調にも支障が出るようになったことから、すっかりAへの気持ちが冷めてしまい、きっぱり別れることにしました。私は、Aに別れ話を持ち掛け、これまでAが私にかけた迷惑を清算するために、Aから私に対して200万円を支払うことを約束する一筆をもらいました。また、私は夫とよく話し合い、Aとの不倫関係を謝罪した上、離婚はせずにやり直すことにしました。その後、私は何度かAに約束の200万円を支払うよう催促しましたが、Aはのらりくらりとした態度を取り、一向に払おうとしませんでした。また、夫は夫で、Aが私と別れるまでに2年近くかかり、その間、Aの行動に強い精神的苦痛を受けていたことから、Aに対して慰謝料を請求したいと考えていました。しかし、どのように話を進めて行けばよいかわかりませんでしたので、夫婦で弁護士に相談することにしました。
弁護士は、夫について、Aに対する慰謝料請求訴訟を提起すること、また、私には、Aが支払いを約束した200万円について、やはり訴訟で支払請求をすることを提案しました。そのため、私たちはこれら2件の訴訟について、代理を依頼することにしました。その結果、夫については、訴訟開始後すぐに和解の機運が生じ、請求額の3分の1の金額でしたが、Aが支払うことに同意し、和解が成立しました。また、私が原告となった、Aに対する200万円の支払請求訴訟では、Aが、私に差し入れた一筆の署名が自分のものではない等と主張したため、筆跡鑑定を行うことになり、長引きました。しかし、鑑定の結果、Aの筆跡であることが証明できましたので、判決により、私の請求は全額認められました。
本件は、不貞をしていた相談者とその夫が、それぞれ、相談者の不貞相手に対し、自らの請求をたてて訴訟を提起した、少し珍しい事例です。本件に即して述べますと、夫は、Aに対し、妻である相談者とAの不貞によって精神的苦痛を被ったとして、損害賠償請求を提起しました。ただし、夫は相談者とは離婚に至っていませんので、当該訴訟において判決になったとしたら、損害額が、離婚に至った場合に比べて低額に認定された可能性があります。この点は、訴訟開始後早々に和解の話し合いに移り、判決を得るまでにかかる時間や、Aの資力等に鑑み、夫の請求額の3分の1の額の一括支払ということで和解が成立しました。一方、夫の訴訟を提起したのと同じ日に、相談者については、Aに対し、不貞関係にあった間にAから受けた迷惑に対する慰謝料として、200万円を請求する訴訟を同じ裁判所に提起しましたので、この2件が同時に進行することで、全体的に相談者夫婦が取得する慰謝料の金額に影響が出るかも知れないと予測していましたが、実際には、これらの訴訟は裁判所の別々の部に係属しましたので、互いに特に影響はありませんでした。なお、Aは、相談者からの訴訟においては、相談者に差し入れた一筆に書かれた署名を、「自分のものではない」と言い張り、慰謝料を支払う約束をした事実を一切認めませんでした。そのため、途中で筆跡鑑定を行うことになり、提訴から判決まで、1年近くかかりました。しかし、鑑定の結果、署名がAのものであることが明らかになりましたので、相談者の請求は全額認められました。本件では、相談者がご相談にいらっしゃる前から、Aは相談者夫婦の請求を無視していましたので、弁護士が介入しても、話し合いには応じないであろうことがある程度予想されました。一応、提訴前に、支払いを請求する内容証明通知をAに送りましたが、案の定なしのつぶてでしたので、すぐに提訴しました。はっきりしない態度を取り続ける相手方と、ご自身で交渉をするのは、ストレスフルですし、時間もかかります。また、本件のように、ご夫婦でそれぞれ請求したいものがあることもあります。証拠関係がそろっていれば、提訴した方が、結局は早く解決するケースも多く、弁護士に依頼すれば、ご自身の労力はほとんどかかりませんので、お悩みの方は、是非弁護士に相談することをお勧めします。