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詐欺グループを特定できなくても「振込先」口座名義人に賠償命令…なぜなのか?
2016年04月15日 11時06分

宝くじを悪用した詐欺でだまされた被害者が、振込先の口座に名義人たちを訴えた裁判で、東京地裁は3月23日、口座の名義人たちに対して、合わせて250万円の賠償を命じる判決を言い渡した。被害者の男性が騙し取られた金額は、約620万円だった。

口座の名義人たちは、「内職募集」のチラシ・ハガキで知り、書き留めや郵便物を転送して、報酬を稼いでいた。一見すると、名義人たちには詐欺に加担しているとの自覚はなかったようにもみえる。

報道によると、今回、被害者側は詐欺グループの特定には至らなかったため、口座の名義人を訴えることになったそうだ。この裁判のポイントはどこにあるのか。原告の代理人をつとめた浅井淳子弁護士に詳細な解説をきいた。

宝くじを悪用した詐欺でだまされた被害者が、振込先の口座に名義人たちを訴えた裁判で、東京地裁は3月23日、口座の名義人たちに対して、合わせて250万円の賠償を命じる判決を言い渡した。被害者の男性が騙し取られた金額は、約620万円だった。

口座の名義人たちは、「内職募集」のチラシ・ハガキで知り、書き留めや郵便物を転送して、報酬を稼いでいた。一見すると、名義人たちには詐欺に加担しているとの自覚はなかったようにもみえる。

報道によると、今回、被害者側は詐欺グループの特定には至らなかったため、口座の名義人を訴えることになったそうだ。この裁判のポイントはどこにあるのか。原告の代理人をつとめた浅井淳子弁護士に詳細な解説をきいた。

 

●裁判では何を求めたのか?

「今回の裁判は、詐欺業者が『ロト6の当選番号が事前に分かる』などと述べて、原告に対し、次々に金員を振り込ませたという事案で、本裁判では銀行口座の名義人になっていた者らに対して責任追及を行ったものです。

口座名義人である被告Aらは、自宅宛てに届いた内職募集のチラシ・ハガキ等を見て、その連絡先に電話したところ、『自宅宛てに送られてくる封筒をそのまま開封せずに転送する内職の仕事』、『始めるためには身分証明書の写しが必要』と言われます。

被告Aらは、これに従い、運転免許証等を指定された住所に送付した上で、銀行から自宅宛てに届いた書留や、本人限定郵便等を含む郵便物を指示された住所に転送し、1件1000円~5000円程度の報酬を受けていました。

本判決では、『転送を依頼している者が、何らかの事情により自らの住所を使用できない手続のためであることは明らか』であり、『被告Aらは、自らの行為が何らかの違法行為に使われている可能性が高いことを容易に知ることができたというべきである』として、被告Aらには過失があると認定し、原告に生じた損害の一部について、賠償責任を認めました。

本判決は、振り込め詐欺系の犯罪インフラの一つである銀行口座について、これを供出した者らの過失責任を認めたものです。

このような口座名義人等関与者の責任を認める判決は、これまで出されていなかったわけではありません。しかし、本判決は、『過失』、『幇助等』といったそれぞれの争点について、いずれについても充実した認定を行っており、過失の対象についても踏み込んだ判断を示した点で、今後の同様の裁判にも影響する、実務上の有用性も高いものであると考えられます」

●詐欺グループと意思を通じている必要はない

「民法では、不法行為を行った者を教唆した者や幇助した者についても、『不法行為を行った者と同様の共同行為者とみなして責任を負うもの』と規定されています(民法719条2項・1項)。

そして、詐欺グループが特定されなくとも、それらの者の詐欺行為により原告が損害を負ったこと、被告らの行為が詐欺グループに対する幇助行為に該当すること、被告らの過失といった要素が認められれば、被告らはこの条項に基づき損害賠償責任を負うのです。

この『共同不法行為責任』が認められるためには、客観的に共同の不法行為によって損害を生じさせたことがあれば足ります(これを『客観的関連共同性』といいます。大判大正2年4月26日民録19輯281頁)。

つまり、特に被告らが詐欺グループとの間で意思を通じている必要はないのです。また、口座開設者に対する責任を追及する際に、特に詐欺グループの構成員を一緒に訴えたりする必要もありません」

●免許証のコピーを渡すことはダメ?

今回の事件では、口座名義人たちは「内職」のつもりで始めたようだ。今後、「免許証などのコピーを渡す」こと自体、気をつけた方が良いのだろうか?

「第三者に『免許証などのコピーを渡す』行為自体が直接何らかの罪に問われることはありません。

しかし、ロト6詐欺などのいわゆる特殊詐欺等の犯罪ツール(銀行口座の開設、電話レンタルの名義人となる等)に使用されることを認識していながら、運転免許証等のコピーを渡すなどした場合には、詐欺罪の幇助等に該当する可能性もあります。

また、犯罪行為としての刑事責任だけではなく、今回の判決のように、積極的に詐欺グループの一員として加担した者ではなくとも、過失があるとして民事的な賠償責任を問われる可能性もあります」

(弁護士ドットコムニュース)

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