17149.jpg
国宝に「油のような液体」かけられる被害が続出・・・どんな「犯罪」になるのか?
2015年04月21日 11時18分

国宝や重要文化財などに、油のような液体がかけられる被害があいついでいる。同種の被害が全国の寺社に広がっており、報道によると、4月16日までに確認されただけで、計9府県、33カ所におよんでいるという。

奈良県の東大寺では、国宝の大仏殿や南大門にある仏像の台座などに油のシミのような跡が付いていた。京都府の二条城や東寺、千葉県の成田山新勝寺でも被害が見つかっている。

現場の状況から、何者かがペットボトルやスプレーを使って、液体をふりまいたとみられる寺社もあり、警察は文化財保護法違反などの疑いで捜査を進めているという。国宝や重要文化財に液体をかけた場合、法的にはどんな問題があるのだろうか。大川一夫弁護士に聞いた。

国宝や重要文化財などに、油のような液体がかけられる被害があいついでいる。同種の被害が全国の寺社に広がっており、報道によると、4月16日までに確認されただけで、計9府県、33カ所におよんでいるという。

奈良県の東大寺では、国宝の大仏殿や南大門にある仏像の台座などに油のシミのような跡が付いていた。京都府の二条城や東寺、千葉県の成田山新勝寺でも被害が見つかっている。

現場の状況から、何者かがペットボトルやスプレーを使って、液体をふりまいたとみられる寺社もあり、警察は文化財保護法違反などの疑いで捜査を進めているという。国宝や重要文化財に液体をかけた場合、法的にはどんな問題があるのだろうか。大川一夫弁護士に聞いた。

●モノの機能を阻害すれば「器物損壊罪」にあたる

「まず、被害にあったのが『国宝』や『重要文化財』ということを考慮せずに考えたいと思います。

他人の『モノ』を損壊した場合、器物損壊罪にあたります(刑法261条)。罰則は、3年以下の懲役また30万円以下の罰金もしくは科料です」

一般的に「損壊」というと、「物理的にモノを壊す」というイメージがあるが、今回のケースのように液体をかけた場合も、「器物損壊」とされるのだろうか。

「モノの『機能』を阻害すれば、物理的に壊したときと、事実上は同じです。油のように何らかの油をふりかけて、簡単に取れない場合は、モノの機能を阻害しているといえるので、『損壊』にあたります。

判例では、飲食店の食器に放尿することも『損壊』だとされています」

●重要文化財の場合、より重い「文化財保護法違反」で処罰される

では、液体をかけられたのが、今回のように「国宝」や「重要文化財」だったら、どうなるのだろうか。

「重要文化財を損壊した場合、文化財保護法違反で処罰されます(同法195条)。罰則は、5年以下の懲役もしくは禁錮または30万円以下の罰金です。国宝も、重要文化財に含まれるとされます」

つまり、単なる「モノ」を損壊するよりも、処罰が重いということだ。

「文化財という、より保護されるべきものを損壊したことから、より重く処罰するというわけです。

ちなみに、文化財保護法違反が成立するときは、先の『器物損壊罪』と二重に処罰されることはありません。

また、仮に犯人が、それぞれの寺院などとは関係ない人物の犯行だとすれば、『建造物侵入罪』(刑法130条)も成立する可能性があります」

大川弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る