29.jpg
五輪「新国立」工事現場で働く新入社員自殺…「月の残業212時間」両親が労災申請
2017年07月20日 14時11分

新国立競技場の工事現場で働いていた建設会社の男性新入社員(当時23歳)が自殺したのは、極度の過重労働とストレスが原因だったとして、男性の両親が上野労働基準監督署に労災申請をおこなっていたことがわかった。遺族の代理人をつとめる川人博弁護士が7月20日、東京都内で記者会見を開いて公表した。申請は7月12日付。

川人弁護士によると、男性は大学卒業後の2016年4月、都内の建設会社に就職した。この会社は、東京五輪に向けて建設中の新国立競技場の工事現場で、一次下請けの業者だった。男性は同年12月中旬から、新国立競技場の地盤改良工事で、施工管理の業務に従事することになった。

男性は今年3月2日、突然失踪し、4月15日に長野県で遺体が発見された。「身も心も限界」などと書かれた遺書が残されていた。男性の死亡をめぐって、男性がつとめていた会社は当初、時間外労働が「月80時間以内である」と説明していたが、遺族側は納得せず、会社や元請け会社に対して資料の提出を求めた。

工事現場のセキュリティ記録やパソコンの記録から分析したところ、男性が亡くなったと推定される3月2日まで約1ヶ月間の時間外労働時間は、約212時間にのぼった。また、男性は2月ごろ、両親が朝起こそうとしてもなかなか起きなかったり、友人に対して「今の職場に3年はいたいが、もたない。辞めたい」と語るなどしていたという。亡くなるまでに精神疾患を発症していたとみられる。

川人弁護士によると、労災申請の段階で、会社側は男性の業務が過重だったこと、労災である可能性が高いことを認めたという。男性の両親は代理人を通じて、「帰宅するのは深夜ででした。朝起きるのがとてもつらそうでした」「息子と同じように、過労で命を落とすような人を出したくないという思いでいっぱいです」とコメントしている。

新国立競技場の工事現場で働いていた建設会社の男性新入社員(当時23歳)が自殺したのは、極度の過重労働とストレスが原因だったとして、男性の両親が上野労働基準監督署に労災申請をおこなっていたことがわかった。遺族の代理人をつとめる川人博弁護士が7月20日、東京都内で記者会見を開いて公表した。申請は7月12日付。

川人弁護士によると、男性は大学卒業後の2016年4月、都内の建設会社に就職した。この会社は、東京五輪に向けて建設中の新国立競技場の工事現場で、一次下請けの業者だった。男性は同年12月中旬から、新国立競技場の地盤改良工事で、施工管理の業務に従事することになった。

男性は今年3月2日、突然失踪し、4月15日に長野県で遺体が発見された。「身も心も限界」などと書かれた遺書が残されていた。男性の死亡をめぐって、男性がつとめていた会社は当初、時間外労働が「月80時間以内である」と説明していたが、遺族側は納得せず、会社や元請け会社に対して資料の提出を求めた。

工事現場のセキュリティ記録やパソコンの記録から分析したところ、男性が亡くなったと推定される3月2日まで約1ヶ月間の時間外労働時間は、約212時間にのぼった。また、男性は2月ごろ、両親が朝起こそうとしてもなかなか起きなかったり、友人に対して「今の職場に3年はいたいが、もたない。辞めたい」と語るなどしていたという。亡くなるまでに精神疾患を発症していたとみられる。

川人弁護士によると、労災申請の段階で、会社側は男性の業務が過重だったこと、労災である可能性が高いことを認めたという。男性の両親は代理人を通じて、「帰宅するのは深夜ででした。朝起きるのがとてもつらそうでした」「息子と同じように、過労で命を落とすような人を出したくないという思いでいっぱいです」とコメントしている。

●新国立競技場の工事現場は「長時間労働」にさらされている

男性の過重労働の背景の一つとして、川人弁護士は「工事日程の厳しさ」をあげた。東京五輪のメインスタジアムとなる新国立競技場は、設計の見直しなどによって、工期が大幅に遅れている。こうした状況から、現場の労働者は、「間に合わせなければならない」というプレッシャーや長時間労働にさらされているという。

川人弁護士は「(男性の)労働実態は、人間の生理的限界をはるかに超えた常軌をを逸した時間外労働だった」「(男性の)死亡後も、関係業者、関係機関において痛苦な反省のうえに改善措置をとっているとは言い難い」「国家的行事であるかといって、その準備のために労働者のいのちと健康が犠牲になることは断じてあってはならない」と批判した。

川人弁護士は今後、男性がつとめていた会社だけでなく、元請け会社や発注者、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、東京都、政府関係機関などに対して、東京五輪に関連する工事現場の労働実態の深刻さについて、把握・改善する措置を講ずるよう求めていく予定だ。

【追記】

川人弁護士はこの日午後、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会をおとずれて要望をおこなった。同委員会は「こうした事態が発生したことについては大変残念です。お亡くなりになられた方のご冥福を心からお祈りするとともに、ご遺族の皆様にお悔やみ申し上げます。新国立競技場の事業主体はJSCであり、本件事実関係については、組織委員会もJSCに照会を行います。今後、同様の事態が起こらないよう、各関係者にも十分ご留意していただくようお願いしたいと思います」とコメントしている。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る